2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

その勉強に意味はあるのか

若い頃はよく勉強した。早く上から認められたい。同級生に差を見せつけたい。周囲から「すごい奴」とはやしたてられたい。勉強は患者さんのため?正しい治療のために知識をつける?そんなことはどうだっていい。知識は力だ。力さえあれば、発言力が強くなる。周…

ハトがハトでいるために

タカ派とハト派のゲーム理論。「タカ派の戦略->どちらかが大怪我して動けなくなるまで徹底的に戦う。 「ハト派の戦略」->自分より強そうだなと思ったら、すっと引き下がる。集団の中でタカ派とハト派が共存したらどうなるか。普通に考えると、戦わない選択肢…

リスクを求める人々

誰だって死にたくない。いい目を見たい。どうやったら生き残れる可能性が高まるのか?どういう生存戦略がもっとも効果的なのか? 取りうる戦略は、問題となっている状況のリスクにより異なってくる。生き残るための戦略は、リスク最小戦略と利益最大戦略との2…

「患者のため」というロジックボム

市中病院で働くのにはコツがいる。市中病院は組織がしっかりしていて、チームでの作業がやりやすい。その病院のルールの中で働いているかぎりは、周りの人が自然に手伝ってくれるので、物事がスムーズに動く。ところが、長い歴史のある病院には厳格なルール…

全体を把握する

研修をさせてもらった病院では、まずは部分の専門家になることを求められた。細い血管にも点滴が取れるようになること、必要な時にCVラインを取れること。気管内挿管、心臓マッサージといった救急手技。そして疾患ごとの治療方法や、薬剤の使い方といった知…

傾聴という万能薬

設計者の発言: モデリングセッションに必要な能力「共感力」を読んで考えたこと。 「初めて吉野に花見に行ったのだけれど、千本桜ってのは誇張じゃないんだね。すごいなあ、あれは。」春の休み明けに読者の友人がそんなことを言ったとする。それを受けて、読…

平等な競争の病理

一つの病棟内でも、ベッドの状況判断をする役、急変時にとりあえず突っ込んでいく役、他科との交渉役など、同じ兵隊の位の医者同士でも役割は分担される。患者さんの急変時もそうだ。そのとき居合わせた医者が、同じ仕事に殺到したら患者は死ぬ。挿管をする…

価値観の多様性を認めるということ

多様性がマイブームだ。ローテーション研修制度。ガイドライン中心の診療。どちらもお上が「あるべき研修医、あるべき診療基準」を示して、「何が正しく、何が間違いか」、「どちらが優れていて、どちらが劣っているのか」を決定し、順位づけしようとしてい…

それは患者であって人ではない

やることは決まっている。たぶんこの病気だ。経過も理学所見も、まず間違いなくその疾患を示唆している。すでにその病気に対して正しい治療は開始され、後数時間もすれば症状は落ち着くはずだ。それでも本当に正しいことをしたのか。自分の下した決断は合っ…

早く心臓が止まればいいのに

この患者さん、早く心臓が止まらないかな。そうなれば、自分にも何をすればいいのか分かるのに。ACLSコースの受講を終了した新人研修医は、しばしばこうした不埒な考えをもって救急外来に降りてくる。苦しんでいる人を診察するのは恐ろしい。まず苦しんでい…

同意書を取るときの注意

セールストークの方法論から。検査同意書をすばやく取るために普段気をつけていること。議論/論争は避ける議論は理性の働きを活発にするので、迅速な判断を妨げる。 相手の体験に合わせて話題を選ぶ。相手の話に逆らわないようにする。患者の正面に立たない…

外来患者の見分けかた

久しぶりに会った友人から、「お前、誰だっけ?」と言われると非常に凹む。相手の顔を覚えるのはコミュニケーションの基本。相手に顔を覚えてもらえないのは自分が相手にとって重要でないから。顔を覚えてもらえない外来患者さんは、主治医にとって「重要な」…

遺伝子治療の未来はどっちだ

遺伝子治療が実用化するということは、近い将来先生方の仕事の大半はなくなるということです。 たとえば糖尿病や喘息の症状を訴えた人が先生方の外来に来たとする。 先生方のやることは2つ。われわれの元に電話して、必要な遺伝子を作ってもらうこと、そして…

何に使うのかわからない薬

研修医 先生、どうしてここでミラクリッドを使うのですか?ICUスタッフ ミラクルだから。ミラクリッドの使いかたの説明としては、これ以上に適切な説明を知らない。特にICUに入ると、ミラクリッド、フサン、FOY、FFP、ステロイド、免疫グロブリンといった、普…