秩序が支配する、安定した世界

全くの「無」、カオスであった世界に秩序が生まれ、フォースが生まれた。それが意思をもてるほど巨大なものに成長したとき、その目に見えた世界は「カオスの縁」だった。世界が徐々に秩序への道を歩み始めたとき、フォースの意思はそれを歓迎したのだろうか?

フォースの意思というものが、「善がもたらす宇宙の秩序」などではなく、最初からカオスの縁の状態の維持に向けられていたのならば、ふがいない力しかもてないジェダイの存在理由も分かる気がする。

善であろうが悪であろうが、強すぎる力は世界に秩序をもたらし、多様性を奪う。多様性の失われた世界からは進歩が無くなり、進化の歩みを止めた宇宙は冷えて滅びる。

フォースにとって、大切に思えたのは「世界自体」か「生命」か。

ヨーダや皇帝陛下で無ければ本当のことは分からないけれど、フォースの意思というものは、生命にとっては必ずしも好ましいものではなかったはずだ。世界に秩序がもたらされれば、世界は安定して生物が増える。有限の世界に増えつづける無限の生物は、やがては癌細胞のように世界を食い尽くす。

放牧された牛に食い尽くされた共有地は、いつか砂漠化して滅んでしまう。世界を豊かなまま維持していくためには、生物の滅びと新たな世界の創生は、必ず必要なプロセスだ。

フォースにとって、増えつづける生命というものが、世界を食い尽くす癌細胞にしか見えないのならば、
ジェダイの組したフォースの意思というものは、生物社会にとっては必ずしも幸福な未来を意味しない。

##生命の声を聞かないジェダイ
進化をするということは、前の世代の到達点を、単なる通過点にしてしまうことだ。

前の世代の歩んできた道は、安定している。一方、その先の道は、試行錯誤で捜すしかない。
試行錯誤には、当然失敗はつきもので、**一定割合の犠牲を受け入れない限り、進化というものはありえない**。

スターウォーズ世界では、帝国の提示した「安定した秩序」という世界プランに比べて、ジェダイの提示する「進化を続ける世界」というプランは、あまりにも厳しく犠牲が多い。

ジェダイは結婚をしないし、家族を作らない。そこには同じジェダイとしての信頼はあっても、人間の社会生活に相当する概念が存在しない。ジェダイの騎士にとって、ジェダイ以外の生物というのは、本質的に他人だ。

ジェダイは特攻する。決して無敵ではない存在なのに、敵地に乗り込むときは常に一人で、案の定窮地に陥ったりする。戦略としては明らかに無茶だ。ジェダイの騎士は「個」の生存を志向しないから、ああいった戦い方をする。戦力的には十分勝てる戦いであっても、生存可能性を高めるやり方をしないから、あっけなく滅びる。

同じ生物でありながら、ジェダイの騎士という存在は、生物社会からあえて距離をとる。議会にも必要以上に干渉しないし、人々の訴えがあっても、なかなか「社会的に正しい」行動を起こそうとしない。その一方で、どう見ても犠牲者の数が増えそうなクローン戦争などには、進んで参加してみたりする。

ジェダイの行動というのは、常に生物が滅ぶほう、滅ぶほうへと選択されているように見える。

>アナキンを除いては。

##声あるものは幸いなり
>鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず。声あるものは幸いなり。

鳴き声を出す鳥を殺すときには、誰もが心が痛む。同じ生き物なのに、声の出ない魚をさばくときには、
心は痛まない。あまつさえ、生け造りなどにして、苦しむ魚を見て喜びさえする。

ジェダイの騎士にとって、生物というのは自分達も含めて、魚のように声を持たない存在だ。
「滅び」というものは、魚の生活の一部になっている。弱い魚は他の生き物に食べられる。
それでも種としての魚は進化の歩みを止めず、世界は続く。

アナキンが聞いてしまったのは、母の声であり、パドメの声だった。

>進化の継続のために必要な犠牲を目の当たりにしたとき、人はそれを受け入れてもなお進化の道を選択できるのだろうか?

スターウォーズという物語は、皇帝陛下とヨーダ、「安定」と「進化」の2つの選択を代表する力が、運命の子に選択を迫る物語だ。

>墓所:「娘よ、お前は再生への努力を放棄して人類を亡びるにまかせるというのか?」
>ナウシカ:「その問はこっけいだ。私達は腐海と共に生きてきたのだ。滅びは私達のくらしの、すでに一部になっている」

漫画版の風の谷のナウシカのラスト、墓所との対決の場面で、旧世界のオーバーテクノロジーの産物である「墓所」は、ナウシカに「お前は世界を滅ぼすのか?」と問い、ナウシカは「滅びは世界の一部だ」と答えた。

大体、「姫様」などいわれる人間は、「ナウシカ」だろうが「虫姫様」だろうが、昆虫ヲタの変人と相場が決まっている。生まれたときから特権階級の彼女らは、平民が何人死のうが何万人死のうが知ったこっちゃない。

救世主になろうなんて考える奴は、頭のねじがどこか外れている。

人間が好きなやつには、救世主なんか努まらない**。

##皇帝陛下は何をしたかったのか
ヨーダと皇帝、フォースの意思に通じた2人の騎士は、全く違った行動を取った。