元オリンピック選手、大学時代からのライバルといった、肩書きや過去。

優れたアングルは選手のギミックを際立たせ、ただでさえ盛り上がる試合を
さらに盛り上げる。もちろん「プロ」レスリングはあくまでも仕事だけれど、
戦いが盛り上がったとき、選手は本当に限界を超えた戦いを見せてくれる。

鍛え上げた肉体を使い、観客を魅了する肉体芸術――それがプロレスだ。

##マッチメイカーとしての国家の役割
僻地から人がいなくなっている。

最近、また新潟の某病院が崩壊したけれど、ここなどは300小規模の総合病院、
昔自分が研修した病院と同じぐらいの大きさだ。

僻地といっても、その言葉の意味は変わってきている。3年ぐらい前に病院が潰れていたのは、
人などほとんど住んでいないような、本当の僻地。今崩壊しているのは、一昔前なら
「地方都市」といわれた規模の地域の中核病院だ。

大学医局の力が弱まったこと。公立病院の長年の赤字体質。病院の「客層」の変化。
病院からスタッフがいなくなった理由はいくつもあるけれど、
地域医療を崩壊させた国の責任は重い。

診療報酬が…とか、医師の訴訟問題が…とか、そういうことは正直あまり興味がない。

お金はあったほうがいいに決まっているけれど、行政の問題というのは、
「現場の空気」にはあんまり響いてこない。

問題なのは、国がまともな「アングル」を作らなくなったことだ。

日本医師会全盛の時代。自民党=医師会という時代はたしかにあって、
世間から見れば厚生省は医師会の言いなり。

世間の古い病院というのは悪どく金儲け。「国は悪」「伝統的な病院は悪」という
構図は、強力に出来上がっていた。

筋の通ったアングルが確立していれば、選手は様々なギミックを身に付けて、
自分を売り出すことができる。

伝統的な「悪役」として「正しい」医療を続けた公立病院。
「革命戦士」として誰も行かない僻地に病院を作った
佐久総合病院や、共立病院系の病院グループ。
現在も地域医療の一戦で活躍している病院は、この頃生まれた。

「救急車のたらいまわし」という言葉が生まれた、約20年前。

救急車を取らない大手公立病院という「悪役」があって、厚生省はそれに対して何ら策を打たない
「無能な役人」というギミックをまとい、自らのシナリオの中に参加した。

マスコミは悪役を叩き、世間は救急病院の出現を歓迎し、千里の救急センターや、日本医大
救急センターがクローズアップされ、人気を博した。この頃はまだガキだったけれど、
テレビで報道される救急外来の医師というのが、ほんとうに「正義の味方」に見えたものだ。

##アングルを変えだした厚生省
おかしくなったのは、まだ最近のことだと思う。

「市民の声」が強くなった。それを突っぱね、世間の顰蹙を一手に集めて、国民を嘲っていたのが
厚生官僚の「ギミック」だったのだが、最近はやけに世間に迎合しているように見える。