ところが、もっと高度を下げて着陸してみると、

地球全体のことは後回しになる。環境問題はとりあえず置いておいて、
今晩何を食べたらいいのかという問題のほうが重要になってきたりする

システムを外から見下ろす人と、システムの中にいる人とでは、しばしば議論が食い違う。

中の人の方が詳しいからか?
そうではない。
「中の人」と「外の人」とでは、そもそも見えている問題の姿が全く違うのだ。

##病院の複雑な手続き
病院のオーダーシステムは最悪だ。

1. 薬を出そうと思ったら、まずカルテに薬品名を書く
2. さらに処方箋に同じことを記載する
3. さらに看護婦さんに「○○さんに薬を処方しました」とお話をする
4. そうしておいて、事務方が処方箋を会計処理して、その処方箋が薬局に回って、はじめて薬が病棟に上がる。
5. その後薬を看護婦さんが確認して……。

一度処方を書いてから、実際にそれが患者さんの口に入るまで1時間以上。

大きな病院になるともっとかかる。

事故防止のために、何人もの人が関与している部分もあるのだけれど、
実際の効果はその逆。いろいろな人の伝言ゲームになってしまって、
医療過誤がおきる温床みたいになっている。

このままシステムに乗っかっていては、治る病気も治らないから、
どうしても急ぐときには回避手段がある。

処方箋を書く前に、病棟で誰かに聞く。

>**「誰か、○○持ってない?」**

事故防止のために、病棟には処方された薬以外は無いことになっている。

ところが実際には、抗がん剤と麻薬以外の大抵の薬は、何故かナースルームのどこかに転がっている。

病院というところは、急ぐときには無いはずのものが何でもでてくる。そういうことになっている。

緊急手段は、時々自分で使ったりもする。

みんな忙しくて、病院なんかかかる暇無いから。

##うまくいっている醜いシステム
ひどいシステムなのに、何故かそれなりにうまくいく。
そんな現場には、大抵の場合「**バッドノウハウ**」が大量にあって、
システムの悪いところを補間している。

医師はバッドノウハウを見つけるのが上手だ。