ゴロツキは、お金を払うことで得られる日常の継続という「安心感」から対価を得る
過去と未来と。
詐欺師は過去を賞賛する。この商品はすばらしい価値を持つ、
この商品を勝ったあなたはすばらしい方だという賞賛は、お金を受け取ったその瞬間に消えうせる。
ゴロツキは未来を保証する。お金を取る代わり、少なくとも翌日1日ぐらいはお金を払った人は
ゴロツキの暴力からは無縁でいられる。
##医療というゴロツキ型のサービス
医療という産業のサービス要素は、どちらかというとゴロツキ型のサービスだ。
医療従事者が作る「もの」というのは、医療従事者の汗や冷や汗、睡眠時間といったもの。
その品質に相当するのが、治癒率とか、安全率とか。
患者に「様」をつけるべきかどうかという議論が時々出るけれど、「様」論議は
詐欺師型のサービスに必要なものだ。
医療が本来求められるのは
未来の保証であって、過去に対する満足感ではない。
ゴロツキ型のサービスを成功させるには、とにかく契約者との約束を守ることにつきる。
ゴロツキが誰かを殴らない保証。保険や株式。国民年金や、税金といった国のサービス。
役所がいくら愛想がよくなったところで、未来に対する保証がなされない以上は
満足度は向上しないし、医療もまた同様。
無用なトラブルを避ける意味では
ていねいな言葉遣いは基本だけれど、それは本質的な解決策にはなり得ない。
##安心を保証するものは何か
IBM のthinkpad というノートパソコンは、そんなに性能がいいわけじゃないけれど
技術系の人に愛好される。自分も使ってる。なんとなく、かっこよさそうだったから。
信頼性はたしかに高いけれどベストというわけではないし、重量や、性能的な面では
他社のノートパソコンに比べて遅れをとっている。キーボードだけは本当にすばらしい
けれど、これも好みの問題。
「IBMが何故技術者に好かれているのか?」という問題の答えの一つが、すべての部品の
分解マニュアルが整備されていることなのだという。
thinkpad は、その気になれば自分で修理できる。これが安心感につながっている。
医療というサービスで未来を保証することは難しい。
「売っているものの品質」に相当するのは安全率だけれど、これを向上させるためには
莫大なコストがかかるし、経験年次が上の医師でないと、安全性の向上を達成するのは
困難だ。
その一方で、医療産業のサービス部分、安心感を向上させることなら、
研修医にだって出来ることはある。