BIPAPモードの設定
BIPAPモードの利点は、患者の自発換気を人工呼吸管理直後から抜管寸前までの間ずっと生かしつづけられる点につきる。このモードの利点は、ちょうど自由に換気が行えるCPAPモードと、患者の肺に愛護的に機械換気を行うことができるPCVモードとをあわせたものに相当する。この両者よりもBIPAPのほうがさらに優れている点として、BIPAP高いPEEP圧と低いPEEP圧の時間設定を自由に調節できるだけでなく、患者の吸気、呼気のタイミングに合わせて2つのPEEP圧をコントロールする優れたトリガーシステムを備えている点が挙げられる。
BIPAPの調節
挿管直後は、従来ならばIPPVやSIMVのモードが用いられる時期であるが、こうしたモードをBIPAPで代替することが可能である。従来のモードともっとも異なっているのが換気時間の設定で、従来の機械換気ではI/E比と換気回数を指定し、吸気時間と呼気時間を間接的に決定していたが、BIPAPではこの2つの時間を独立して設定することができ、これらの時間の設定の結果I/E比や換気回数が決定する。挿管直後の急性期であっても、BIPAPモードは患者の自発換気を消さないため、呼吸器の設定する換気回数やI/E比はあまり意味をもたなくなる。
また、従来型の機械換気であれば1回換気量を設定し、患者の気道内圧をモニターしていたが、BIPAPモードでは逆に気道内圧を設定し、患者の分時換気量をモニターすることになる。
具体的な設定としては以下のとおり。
- 通常の呼吸不全の患者でのPEEP圧と同じ圧に、低いPEEP圧を設定する。
- それよりも12-15cmH2O程度高い圧に、高いPEEP圧を設定(1回換気量を見ながら調節)する。
- 高いPEEP圧の時間は1.5-2.5秒、低いPEEP圧の時間は3.5-2.5秒程度から開始し調節する。
- 酸素化が悪ければ高いPEEP圧の時間を延長し、CO2の貯留があるようならそれぞれの時間を短く調節して換気回数を増加させる。
BIPAPのウィーニング
BIPAPモードは、ウィーニング中も同じモードを継続して使用できる。方法は以下のとおり。
- 状態が落ち着き、FiO2を50%以下まで下げられたらウィーニング開始。
- まずは高いPEEP時間を徐々に減らし、I/E比を1:1から1:3程度まで徐々に増加させる。
- この間、患者の吸気、呼気にあわせて機械がタイミングを変更するので同調は気にしなくても大丈夫。I/E比を調節していくと、そのうちに作動はプレッシャーサポート換気とまったく同じになる。
- 最後に高いほうのPEEP圧を徐々に減少していき、高いPEEP圧と低いPEEP圧が同じになると、CPAPと同じ動作波形が得られる。
- これで問題なければ抜管を考慮する。
歴史的な経過
BIPAPとAPRVは自発呼吸に重ねて機械換気を入れる、という部分で本質的にまったく同じものであるが、出自が異なる。
BIPAPは当初、患者にウィーニングを行う際に便利なモードとして紹介され、どうやったら機械換気を行いつつ自発呼吸を残せるか、という部分に注目して開発が進められた。
一方、APRVは高いPEEP圧が必要な呼吸不全の患者で、気道内圧をそれ以上高めることなくCO2を除去する方法としてPEEP圧を一瞬抜く、という方法が考案された。
患者の自発呼吸がない場合、BIPAPの気道内圧波形はPCVのそれと同じになるのに対し、APRVの圧波形はPC-IRVの圧波形と同じになるのはこうした開発過程の差によるものなのかもしれない。いずれにしても、現在のBIPAPモードであれば時間軸の設定は自由にでき、こうした議論自体に意味が無いが。