意図的に仲間はずれをつくる

何人かの人が集まる中で会話するとき、集団の中に多数派と少数派とを作ったほうが会話が盛り上がる。

少数派は何とかその状況を脱しようともがく一方、多数派には強力な仲間意識、共同体意識が生まれる。多数派でいるのは楽なので、皆常に多数派であろうとする。結果、少数派は常に少数派でありつづけ、これがずっと続くと村八分、あるいは「いじめ」といった状態になる。

リーダーがこうした状態を解消するには、何らかの方法で集団を意図的に分割できるようになると、常に特定の人間が仲間から外される機会を減らすことができる。会話に参加した集団を分割する方法はいくつもある。

特定の話題に対する賛成、反対で分ける方法はもっとも簡単だが、一方で集団がどういう分かれ方をするのかのコントロールがつかず、結局多数派にはいつものメンバーが収まってしまう。また議論が盛り上がると喧嘩の原因にもなる。

逆に、会話の流れとは全く関係ない部分、参加者の年齢、性別、職種などの話題をあえて振り、会話に参加した人の考え方ではどうしようもないことで集団を分割すると、分かれかたのコントロールができ、同じ人が常に少数派に入ってしまうのを防ぐことができる。

たとえば、年齢で集団を分けようと思ったら話の流れで以下のような会話を振る。

年上を少数派にする場合

○○さんは「シャボン玉ホリデー」を現役で見ているから
若い頃のベンチャーズを知っているくせに何でそんなことをいうんですか?
コント55号なんて僕たちの世代はもう知りませんから
ベトナム戦争がいつ終わったか知ってます?

年下を少数派にする場合

おしん」たちを見たことがない奴らに苦労話をして欲しくはないね
お前ら青函連絡船なんて見たことないだろ
やっぱり「白い巨塔」は田宮二郎じゃないとね

病院内はさまざまな年齢層、さまざまな出自の人が同じ病棟で働く。自然発生的にできる少数派は往々にしていじめの原因になるので、早めに手を打たなければならない。

こんなとき、中学生日記よろしく「○○君を仲間に入れてやれよ」、などと諭しても、いじめの燃料を注ぐだけである。

集団での会話の中で意図的に仲間はずれを作れるようになると、会話の流れの中で多数派と少数派とを次々に入れ替えることができる。うまくやると仲間はずれになりそうな研修医を会話の中に引きずり込むのに役に立つ。

もっとも、いちばん簡単なのは上級生同士で結託して全研修医をいびり倒し、「敵の敵は味方」の理屈で研修医の集団をまとめることなのだが…。