心不全の治療
某講演会から。
hANPは心臓をリラックスさせるホルモンである。
心不全の治療戦略
血行動態の改善 カテコラミン、PDE阻害薬
減負荷療法
亜硝酸薬 ACE阻害薬(前負荷軽減)
PDE阻害薬、hANP、ACE阻害薬(後負荷軽減)
心筋細胞の保護薬 hANP、ACE阻害薬、アルダクトン、ベータ遮断薬
急性期心不全の治療戦略は、現在心刺激薬の時代から心筋保護を急性期から行う戦略に変わりつつある。
レニン-アンギオテンシン系の研究は、現在アンギオテンシンからアルドステロンにその話題が移りつつある。
ANP/BNPはともにアルドステロンの産生を抑制する形で作用する。
ANP/BNPの作用
Na利尿
血管拡張薬としての作用
アルドステロン、AVPの分泌抑制
心筋肥大や繊維化の抑制
アルドステロンは副腎で合成されるが、不全心筋を持っている人に限っては心筋でも合成される。
アルドステロンは、今まで予想されていた以上に心血管系に悪影響を与えている。
組織レニン-アンギオテンシン系への悪影響
酸化ストレスの原因
心筋組織中のアルドステロン濃度は、血液中の17倍程度まで上昇している
アルドステロンは酸化作用の強いホルモンで、特に心筋組織の炎症、繊維化をもたらす。
アルドステロンのこうした作用は、試験管内では再現されにくかった。こうした悪い作用は、ナトリウムの介在が無いと生じない。
減塩が徹底的に行えるならば、レニン-アンギオテンシン系の心筋への悪影響は非常に少なくなる可能性がる。
スピロノラクトンの内服は、ACEの遺伝子の発現を抑制する。ACE阻害薬よりもさらに手前の段階で、アルダクトンはRAASの働きを抑制している。
BNPの静注は、アルドステロンの産生を押さえる。一方、血液中のレニン、ノルエピネフリンの濃度はあまり下げない。
ANP/BNPはACE阻害薬、ベータ遮断薬、ARB/アルドステロン拮抗薬の作用を併せ持っている。
心不全患者では、患者の血圧の低下よりも先にBNPの低下が生じる。
心不全患者において、本気で患者の後負荷の軽減を図るには相当な量のACE阻害薬が必要になる。
重症の心不全の患者さんに、本格的な心保護的な治療戦略を行うと、血圧の上昇が見込めず無尿になる。しかし検査データが悪化しないならば、3日ぐらい無尿でもその後必ず利尿が来る。
亜硝酸剤の静注は、うっ血が取れても症状の軽減がこない一方、ANPの静注は肺うっ血がある状態であっても患者の症状がまず楽になってくる。
お話を聞いてからACE阻害薬の処方量が2倍になった…。
データの厚みといい、理論の分かりやすさといい、非常に説得力のある講演だった。