空気を読む

空気を読むということ

病棟の空気を読むということ
誰かの部下になるということ
上級生より早く動くということ
勧められた酒を断らないということ
従うこと
素直に頭を下げること

空気を読むということ

急変の空気を読むということ
いまモニターのアラームが鳴ったということ
いまスタッフが駆け出したということ
いま救急車の音が聞こえたということ
いま廊下をストレッチャーが走っていったということ
常に鉄火場にいるということ
病棟の信頼を得るということ

空気を読むということ

失敗の空気を読むということ
それは院内PHS
それは院外コール
それは患者さんのクレーム
それは上級生の怒声
それは婦長さんの説教
怒られたことを嘆かないということ
未来に誇りと希望をもつこと

空気を読むということ

下積みの空気を読むということ
研修医にはイエスしかないということ
医師は倒れるまで働くということ
病棟は歩くものではないということ
夜は寝るものではないということ
上級生の鉄拳の痛み
いのちがけということ

空気を読むということ

将来の空気を読むということ
最初は働けないということ
働けるようになるということ
働かされるということ
働かざるを得ないということ
一生自由などないということ

1年生の入ってこない病棟。何年ぶりかの採血と検体運び。
新入生が来るのは来週から。
そろそろと復帰。