嫌話

疫病のこと

ほとんどの病気は他人には伝染しない。針刺しなどによる感染の危険というのはあるけれど、 医者の仕事というのは見た目以上に安全だ。>自分自身は安全地帯にいて、そこから病気に対してできることをやるこれが医者の仕事の基本。伝染する病気を診察するとき…

blog 管理者の正体を暴く方法

医師の書いている日記が増えた。4-5 年前までは本当に少数。blog なんてサービスもまだ無い頃は、 ネット上で何かを書いている同業者なんて、ちょっとしたリンク集に載せられる程度しかいなかった。Weblog がブームになって、同業者の日記が増え、m3.com み…

未来予測

未来予想##2008年:出産券 出産可能な施設の減少を受け、一部自治体で「出産券」の発行が行われる。里帰り出産等による、地方での予期しない出産を避けるための処置だったが、 ネットオークションでの出産券の売買、偽物の出産券が出回るなど問題点が指摘され…

交渉ごとにおける原資の問題

癒しをもたらす思考の停止

>DIYの店にドリルを買いに来る来る人が本当に欲しがっているのは、「ドリルそれ自体」 ではなくて、「ドリルのあける穴」だ。

白と黒の争い

ルールは非常に簡単。1. 黒は自分の力で戦う。何でもできる代わりに、何かの代償が必要。 2. 白は規則に縛られる。正義とか、神とか法とか、そういうものに。 規則の範囲でしか力を使えない代わり、その規則に逆らったものに対しては非常に強力な力を出す。 …

戦うときに大切なこと

うちの高校は共学だったけれど、高校3年になるまでは男女は隔離。 3年生になって、初めて机を並べる「共学」になるのがならいだった。5年間もの男ばかりの生活の後の共学。男子生徒の2/3は奮起し、受験の成績は向上。 残りの1/3は「愛」に走り、成績を落としたと…

前エントリーへの返信

分かりにくい文章を書いてすいません…。このエントリーもたとえ話ばっかりです。勿体つけてるわけじゃなくて、 もともとアナロジーを考えるのが好きなだけなんですが。シマウマのたとえ話で意図していたことというのは、大体以下のとおりです。サバンナの登…

地域医療はどう変わるのか

福島県の産科の先生が刑事告発された。状況は[2年前](http://erjapan.ddo.jp/index.html)と同じだ。理不尽な理由で刑事告発がなされ、みんなが あちこちで憤りを表明し、支援の輪が広がり、意見を発信できる医師は 誰もが悲惨な未来を予想して、そのあと何も…

地域で気分よく働くのに必要なもの

地蔵に注意を払うことが少なくなった気がする。本学の裏の交差点には、昔から交通安全祈願のお地蔵さんが立っている。数年前、どこかのバカが地蔵の首を蹴り飛ばしてから何度か修復されたが、 そのたびに「首なし地蔵」が交差点を見おろす(目が無いけど…)こと…

期待の消失と医療の恐慌

最近の小児医療崩壊とか、僻地医療の崩壊といった話題というのは、 社会全体の大きな問題なんかじゃなくて、医師同士の狭い社会の ローカルな問題なんじゃないか。そんな妄想。 ##子守協同組合のお話。 >何人かが集まって、お互いに子守をしあおうと合意しあ…

真空の生む大きな力

##平等で無気力な集団 「市民」とか「みんな」とか、大人数の集団に何かを訴えて、力をかしてもらうのは難しい。大人数の集団に何かを訴えるなんて、空気に突っ込んでいくみたいなものだ。 何かをやろうとして助けを求めたところで、みんなよけるだけで何も変わ…

正しいやりかたの復権

皆の声を集めることぐらいバカらしいことはない。環境保護とか、イルカを救えとか。なんだか胡散臭いスローガンに酔った連中が、 今でも道で叫んでる。みんな目線が狂ってる。もうバリバリ(死語)に自己啓発入りまくり。この手の連中は、目的を達成するのに募…

子を奪われた母は子に奪われる

>子供は親のすねをかじる。だらしのない子供は、大きくなってもかじりつづける。気合の入った子供は、皮膚を食い破り、筋を貪り、骨を割って骨髄まで啜る。南の島では、戦争で子供を亡くした親御さんには、毎年終戦記念日になると見舞金が配られるのだそうだ…

専門性のジレンマ

##専門医栄光の時代 どうせ医者にかかるなら、ちゃんとした専門医にかかりたい。現在ほとんどの人がこう考えている。 医者も患者も、専門医を目指す時代だ。誰もが専門家を目指す。卒業当初の医者は、誰もが「一般医」という名の、 何も出来ない人間に過ぎな…

自然というエンジニアのやりかた

>**なぜコードを最適化するのですか?** >**「……そこにコードがあるから。」** ##エンジニアは常に最適な設計を目指す エンジニアは、たとえ見返りが無くても最適解を目指す。このモチベーションこそが、人間社会をここまで繁栄させた原動力だ。一方、自然界…

産科の崩壊の雪崩

##思考実験 1. ゴムか何か、変形可能な材料で出来たサラダボウルのような容器の中に、玉を1つ置く。 2. 何もしなければ、玉はボウルの底で静止している。ボウルの中心はちょうど底に当たる場所なので、少々外乱を加えた程度では、玉はすぐにボウルの中心へ戻…

痛くないやりかたが正しいとは限らない

##道具には痛いものとそうでないものとがある 外科医の使うピンセットや鉗子には、「鈎」のついたものとそうでないものとがある。 左写真、左側が鈎付きの鉗子の先端。右が通常の鉗子。右の写真は、鈎の拡大。一見すると、鈎無しの鉗子のほうが、組織にやさ…

事実は発見されるのではなく作られる

>強い想像力を持っている人には「100%想像した通りの未来」が訪れるということではない。 そうではなくて、強い想像力を持った人はあまりに多くのディテールを深く具体的に想像してきたので、 訪れるどのような未来のうちにも、「ぴったり想像した通り」…

少ない予算で人を使う方法

年棒1000万円の人間10人を、7000万円で1億円分働かせる方法。以下のような規則を設ける。年棒1000万円。ただし、内300万円については、自己の判断により返納する権利を有する。「義務」ではなく、「権利」というのがポイント。自分が1000万円分働いたと思え…

裏切らないという宣言

病院を移るというのは、結構恐ろしい経験だ。知り合いのいないところに一人で行かなくてはならないし、そこで初対面の医師どうし。就職早々しなくてはならないのは、自分が信用に値する人間であり、ここでいっしょに働くだけの価値のある人間であるとアピー…

リスクを求める人々

誰だって死にたくない。いい目を見たい。どうやったら生き残れる可能性が高まるのか?どういう生存戦略がもっとも効果的なのか? 取りうる戦略は、問題となっている状況のリスクにより異なってくる。生き残るための戦略は、リスク最小戦略と利益最大戦略との2…

医者が突進しなくなるとき

仕事に慣れたばかりの医者は無茶をしたがる。医者を始めたばかりの頃、点滴一つ取れない頃は何をやってもお客さんの迷惑になる。採血をすれば相手の腕はアザだらけ。点滴を取ろうとすれば患者さんの顔が恐怖に引きつるのがすぐにわかる。こんな状態をくぐり…

病院のライフサイクル

救急を取る病院がまだまだ少なかった時代。地域の基幹病院は県立病院しかなく、救急車で30分。救急の対応も今ひとつ。地域に「住民のための」新しい病院への欲求が高まった頃、200床程度の規模でその病院は開院した。開院したての病院には何もない。とりあえ…

臨床研修初日

研修医の祈り急患当番の命を受けたとき 神よ何回眠れぬ夜を越そうとも 倒れず働く強靱な生命力を与え給え救急外来から手術室まで 急変の恐怖から私を救い出すパワーを与え給え婦長の叫びも聞き流し 上司の怒りの炎を消し去る力を与え給え私は天職に従い生命…

共通の敵をつくる

大きな問題、マンパワーを喰う問題を解決するのは個人の力では限界がある。専門家集団によるチームは、思考のパワー、アイデアの豊富さといった部分では、個人とは比較にならない力を持っている。専門家集団による治療はすばらしい。大学病院級の施設には、…

空気を読む

空気を読むということ病棟の空気を読むということ 誰かの部下になるということ 上級生より早く動くということ 勧められた酒を断らないということ 従うこと 素直に頭を下げること 空気を読むということ急変の空気を読むということ いまモニターのアラームが鳴…

悪意の元気玉

人事異動のシーズンである。病棟の顔ぶれは一新し、なじんだ顔の研修医もいなくなり、新人が入ってくる。勢い、この時期の上級生の話題は、新しく入ってきた研修医の話題が増えてくる。どこの医局も、上級生の数は数人、多くても10人を大幅に越えることは無…

忙しい病院の思いで

中小規模の病院では、スタッフが数人辞めるだけで病棟業務が回らなくなる。一般内科をやっていた頃は、なぜか周囲の病院がよく潰れかけ、そのつどヘルプ要員として駆り出された。こうしたときに昔からとられてきた方法はこうだ。まずは入院患者を一定数以上…

臨床研修2題

本日をもって貴様らは研修医を終了する 本日から貴様らは医学の探究に身を捧げる臨床医である 兄弟の絆に結ばれる 貴様らの潰れるその日まで どこにいようと全ての医師は貴様らの兄弟だ 多くは地方病院へ向かう ある者は二度と戻らない 病棟業務に明け暮れデ…