細菌学者は、病院全体、世界全体の利益を最大化させることを考える。患者の死亡割合が「誤差範囲」なら、抗生物質を使わずに、耐性菌を減らすことを考える。

「**あんたら感染症屋は、人間よりバイ菌のほうが可愛いんだろ!**」。内科と細菌学者とは、こうして喧嘩になる。

##恋人に行う医療
植え込み型除細動器(ICD)という機械がある。

心筋梗塞後、あるいは重症心不全の患者さんで、これを植え込んでおくと致命的な不整脈が出ても、
助かる可能性がある。

ICDの生命予後改善効果は大きなトライアルで証明されている。
患者さんの選択さえ間違えなければ、ICDを植え込んでおけば、長生きできる可能性は高まる。

ICDを植え込んだ人の多くは、機械が作動せずに一生を終える。機械が作動するときというのは、
致命的な不整脈が発生したときだ。不整脈の発生が無かった人たちは、結果として
ICDを植え込む必要が無かったとも言える。ICDの効果というのは、
あくまでも「致命的な不整脈が出た後の治療」だ。不整脈の発生自体を抑える効果は無い。

ICDは高価な機械だ。タバコの箱ぐらいの大きさなのに、国産の高級車1台が買えるぐらいする。