自分が今抱えている患者の問題に対して、その「解答」を知っている医師は誰なのか。

そういったことをリアルタイムで把握するシステムは、今のところ存在しない。

「今その瞬間」に医師が把握できる状況というのは、自分の周りのせいぜい10m程度の範囲だ。
遠くの人が何をやっているのか、そうした情報を把握する手段というのは実質存在しない。
現在の病院組織というところは、スタッフ一人一人がバラバラの細胞
の寄り集まりだ。それはまだまだ「組織」などという高尚なものにはなりえず、
単に人が群れているだけの状態だ。

神経細胞」に当たるものが存在しない以上、情報の伝達というのは、
「伝言ゲーム」の時代からなんの進歩もしていない。

病院のどこかで、患者が急変して困っている医者がいる。
そのとき同じ瞬間、この病院では10年目クラスの医者が数人、
次の検査前の待ち時間を医局でダラダラ過ごしている。
医療という仕事は、生き物相手だけに空き時間が多い。

医師同士のネットワーク化が進んで、こうしたベテラン医師の空き時間を有効利用できるならば、
同じマンパワーであっても、もうすこし病院の稼働率を上げられるかもしれない。

##情報化した軍隊の話
戦国時代。1列に並んだ両群の大将が「突撃!!」の命令を下しても、
実際に突っ込んでいくのは大将の周りの兵隊だけだったのだそうだ。

無線機など無い時代では、隣の人が突撃するのを見て、
「突撃命令が下ったんだな」という情報が伝わっていく。
だから、せっかく1列に並んでいても、敵軍と衝突するのは大将以下の真中の部分だけ。
軍隊の両翼はまだまだ最前線に達しておらず、戦闘に入れない。

こうした状況は最近までほとんど変わっていない。
例えば戦車隊同士の争いなどが起こっても、実際の戦闘現場に駆けつけられる
戦車の数というのは、部隊全体のせいぜい半分なのだそうだ。
残りの半分は、突撃命令が出るのが遅れたり、あるいは
自分の現在位置の確認に手間取ったりして、結局戦闘には間に合わない。

自分と相手の部隊の総数が同じならば、もしも「**突撃!**」の命令直後、
全軍をその場所に突っ込めるのならば、2倍近い戦力差を
ひっくり返せる可能性が出てくる。

軍隊を情報化する試みというのは、湾岸戦争の頃から活発になってきた。
具体的には以下のようなことをやったらしい。