兵器もまた、通信系を作るようになった。攻撃する目標が3つ。こちらの飛行機が3機。以前なら、3機の飛行機は、それぞれが3つの目標を狙い。合計9発のミサイルが発射された。現在はお互いの飛行機が通信して、3つの目標に使うミサイルは3本だけ。

こうした通信システムを導入した米国の実験部隊は、本当に2倍近い戦力差をひっくり返したらしい。
もっとも使った機材は故障続出で、まだまだ未完成なものだったそうだが。

##病院組織に神経系を実装する
人間の潜在能力というのは、本来の3割ぐらいしか使っていないらしい(北斗の拳の受け売り)。

これを常に全開にしたら発狂するのは目に見えているが、今の人的なネットワークというのは、
人の集団本来の能力の10%も引き出していない。

これを改良して、もう少し生理的なレベルに近づけるだけでも、
稼働率は現状の2倍か3倍だ。このぐらいまでなら、予算もマンパワー
増すことなく、病院の患者処理能力を上昇できるかもしれない。

今の電子カルテは何の役にも立たない。あれは官僚の仕事が楽になるためのシステムで、
現場で働く人には何の恩恵も与えていない。
必要なのは、官僚の仕事が楽に出来るシステムなどではなく、
病院同士、スタッフ同士のコミュニケーションを円滑に行えるやりかただ。

##重症病棟に意味はあるのか
ベッドの稼働率を上げるには、空きベッドをリアルタイムに把握できるようにするだけでは足りない。

病院のベッドというのは「○○病院」という1つの世界ではなく、実際の世界のように、そこには見えない「国境」がある。

小児科という国には内科の患者は入れないし、その逆も然り。「人種」ごとに入っていい国というものが
厳として存在する。国境を越えるためには、友人関係のような、
法律の裏をいくルートをたどらなくてはならない。

病院世界にはもう1つ、「患者重症度」という身分制度がある。内科・外科系のほとんどの患者さんは、「重症患者」という
身分で病院に入り、徐々に症状が軽症化して退院、あるいは「慢性期」というカテゴリーに入り、リハビリ棟に移っていく。

それぞれの重症度に応じて、入院できるベッドというのは決まってくる。重傷の人は軽症ベッドでは管理できないし、
あまりに軽症の人がICUに入ろうものなら、一晩中響くモニターの音で眠れない(慣れるとその音で落ち着けたりする)。

この過程は、生物でいうと**摂食=>消化=>吸収=>排泄**のようなサイクルに似ている。

小さな動物は、摂食から消化、排泄のサイクルが短い。逆に、大きな動物はこのサイクルが長い。

大きな動物は、消化に時間がかかる。大きな動物が、「腸」のどこかで便秘でもしようものならば、
その間「口」や「胃」に相当するベッドには患者を入れることが出来ない。ICUや重症病棟に入った患者は、軽症病棟に
空きベッドが出来ないと、病気がよくなっても軽症病棟に移れない。重症病棟は良くなった人でいっぱいになり、その間
病院は「満床」になる。

同じベッド数であっても、無数の小さな病院であれば、どこかの病院が渋滞しても、
他の病院がその機能を補間する。律速段階が生じないので効率がいい。
逆に、大きな病院1つであれば、どこかのサイクルに必ず律速段階ができる。
そこが渋滞すると、その地域のベッドの回転は致命的なダメージを受ける。

今の病院システムでは、患者さんの入院する病棟を移すためには、
その患者さんの「重症度」をどう判断するのか、
患者さんを送り出す側と受ける側とで、その認識が一致しないといけない。誰でも楽をしたいから、
患者さんを送り出す側はその人を「軽症である」と判断し、受け入れる側は「重症である」と判断しがちだ。

結果、病棟を移るときにはいつも揉める。病院の回転数は落ち、大きな病院はいつも満床だ。

もともと、重症度ごとに病棟を分けようという発想は、お上から落ちてきたものだ。
昔は40人医者がいれば、病院の中に40個の個人病院があるようなものだった。
自分の受け持ちがICUにはいれば、自分で診る。患者のリハビリも自分でやる。

一人の医者が重症を何人も抱えてドツボっているときは、他の医者が頑張る。
不公平感は、サボっていた医者を飲み会で潰して補う。乱暴だけれど、それなりにうまくいっていた。

そのうちに保険制度が改定される。救急加算。重症ベッド加算。療養型病棟。
こうした保険上の特典の導入は、
入院中の患者さんの中に必要のないカースト制をもたらした。

重症ベッドで重症患者さんを診るのは、
たしかに楽だ。それでも、今の制度はそれがもたらすメリットよりも、
手続きが増えた分の非効率のもたらす
悪影響のほうが上回っている気がする。

自転車操業の成り立たない組織なんて、どう考えても成り立たない。(きっとまだ続きます)