禁止事項も、規則を破るとどんな結果が待っているのか、具体的に書く。

これを読んで、自分がどんなことができるようになるのか。
果たして読むに値する内容なのか。こうした不安感がぬぐえないと、読者は集中できない。
読者が安心して読める文章は、読みやすいし分かりやすい。

それでもなお、マニュアルを読むのは面倒だ。工業製品。曲がりなりにもプロの作った取扱説明書ですら、
まともに読みきったことなどほとんどない。使いかたが分からずに失敗したことなど何度もあるけれど、
目の前に「現物」がある以上、試行錯誤して見たくなるのが人情だ。

病棟マニュアルも同じだ。「読まないと事故になるぞ」といくら脅しても、目の前にはいつも病人がいる。
読むひまがあったら、目の前の現実をとりあえず何とかしたい。読む時間は惜しい。

##伝わりやすさはお互い共有しているものに比例する
「一目見てパッと分かる」を目指すには、テキストというメディアはまだまだ非力だ。

音声メディアや映画に比べれば、テキストを読むのは圧倒的に速い。
それでもまだまだ「一目で」には遠い。

コミュニケーションを速く深める基本は、お互いの経験をより多く共有しておくことだ。
長年一緒に働いた仲間であれば、言葉にしなくても伝わる部分は増える。
同じ仕事場の仲間。同じ科を専門にしている人。同じ言語を話す人。同じ地球に住む人。共有するものが少なくなればなるほど、
新しいやりかたを共有するのに時間がかかる。

日本語という言語は、漢字があるぶん、英語よりも習得しにくい(多分)。
日本人は、言語を覚えにくいだけ、英語圏の人よりも共有しているものが多い。
日本語は、漢字を使って情報を圧縮したり、意味を画像化して共有できるため、
英語よりも伝達するのに時間が短くて済む。

習得するのにより分かりにくい言語、文法が複雑であったり、漢字やひらがな意外に多くの記号の
習得が必要であったりする言語があれば、情報の伝達はもっと速くできるかもしれない。

##ビジュアル言語というもの
べた書きのテキストというのは、2次元媒体である「紙」の特質を100%生かしきれていない。

少々の改行や段落わけがあったとしても、今の小説のようなメディアは、極端な話テープのような細長い紙でも
再現可能だ。せっかく「本」という2次元の媒体を持ちながら、これはいかにももったいない。

紙は縦横に広がりを持つ空間だから、本当は各々の単語の紙面での位置や大きさ、単語間の距離や関係といった
情報をも表現できる。

このあたりを生かしきっているのは漫画なのだけれど、従来の国語文法の中には、こうした単語の位置情報、
距離情報をどう表現に生かすのかという観点は欠けている。

紙の空間情報を生かし、従来型の文章以上の情報量を持たせようとした試みは総じて「ビジュアル言語」と呼ばれる。

代表的なものはフローチャートのような「構造化チャート」、プログラムを記載するのに用いられる「[UML](http://e-words.jp/w/UML.html)」、
新世代のノートの取りかたとして広まりつつある「[マインドマップ](http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%A4%A5%F3%A5%C9%A5%DE%A5%C3%A5%D7)」といったものがある。

位置情報を併用した文章表現には、従来の文章には出来ない、以下のような特徴がある。