厚生省は「果樹園の管理者」
苦い果実も甘い果実も、果樹園の経営者に取ってはお金になる大切な作物。
果物は昆虫が受粉しないと実にならない。甘い果実にばっかり虫が集まっても
実を食べられてしまうだけだから、果樹園の経営者は苦い果実を昆虫に
食べさせようと、あれこれ苦労する。
残念ながら、苦い果実を甘くする行為には意味がない。昆虫は、苦い果実に塗られた
蜜をなめることはあっても、蜜がなくなったらすぐに甘い果実を実らせる木へと群がる。
好んで苦い実を食べる昆虫など、そうはいない。
2種の果実と、数種類の昆虫。
こんな簡単な世界ですら、管理者の外乱に対してある程度の強靭性を持っている。
苦い実を甘く見せようが、数匹の昆虫を潰して見せようが、何の効果もない。
昆虫は甘い実をつける木に群がり、苦い実をつける木からはますます虫がいなくなる。
こうした生態系を変化させようと思ったら、「要石」になっている生物種に手を加えることだ。
この生態系の場合、**要石**となっているのは、昆虫の共通の好物である「甘い果実」。
甘い果実に苦い汁を塗ってみたり、甘い実をつける木を伐採したりすれば、
昆虫は甘い実を食べられなくなる。
「要石」に対する操作は、どんなに些細なものでも生態系全体を揺らがせる。
ただし、その結末を読み切るのは非常に難しい。
結末を素朴に予想すれば、全ての果実が「苦く」なれば、甘い果実、苦い果実に等しく
虫が群がり、果樹園経営者の目標は達成できる。ところが実際にはそんなには上手くいかない。
甘い実を求め、果樹園からは全ての虫がいなくなってしまうかもしれない。
##予想される「苦い」政策
「苦い」政策がとられたことは、何度かあった。
1961年の日本一斉休診。1971年の保険医総辞退。いずれも日本中の医者が反発し、
厚生省と医者との突っ張りあいは、一応医者側が「勝った」。
時は移り、
医者は弱くなり、数が増え、団結しなくなった。
この数年、医者をいくら刺激しても、疲労した医者は形ばかりの憤りを表明こそすれ、
実際の行動はほとんど起こさない。
厚生労働省は、あるいは今こそが「苦い」政策を施行するチャンスと思っているかもしれない。
具体的には、**都市部で働いている医師に重税を課す**。大体、今の年収の1/3ぐらいの奴を。
もっともらしい理由なんて、いくらでもつけられる。