最後は民衆、あるいはその時代の殿様からほめられる。

桃と金とは置換可能。鬼が島から帰った金太郎が足柄山
に凱旋したって意味は通るし、幼少の桃太郎が悪い熊を投げ飛ばしたって、鬼が島には問題なく行ける。

それぞれの要素が、どのような人物によって、
あるいはどんな方法によって実現されるのかは、問題ではない。

大切なのは、その要素を実行するのが誰かではなくて、動作する順番のほう。
物語では、それぞれの要素が出現する順序というのは、決まっている。

出来事が起きる順序は偶発的ではない。

扉をこわす前に強盗に押し入ることはできない。
鬼が島から帰った桃は、もう団子で動物を釣るような真似をしてはいけないし、一度立身出世した金は、熊を投げ飛ばしちゃいけない。これをやると、物語の構造が崩れてしまう。

順番は、物語のジャンルごとに定まっている。
魔法物語とミステリーとでは順番が違うけれど、それぞれのジャンル内では、だいたい同じ。

##過誤の物語の構造
入院してから悪い転帰に至るまでの
行為というのも、いくつかの要素に分けられる。

1. (間違った)原因の発見
2. それを部分的に裏付ける検査所見
3. 部分的に解消する症状
4. 早期退院などの何らかの圧力
5. 他人に相談しずらい状況
6. 患者の不安の訴え、家族からのプレッシャー
7. 入院からの経過の見直しと、間違った納得
8. 「つく」、あるいは「呪われた」当直医
9. おせっかいな誰かの指摘
10. 間違いの気づき、あるいは悪い転帰

過誤物語の構成要素は、たぶん本当はもっとあるけれど、
とりあえず思いついたものだけ。

これらの構成要素が、
1から10まで全部そろうことは少ない。