退院時の注意

全ての患者が良くなって退院してくれればいいが、内科はそうは行かない。

特に高齢者の割合が増える一般市中病院の場合、家族の希望は出来るだけ長い期間の入院になり、もともとの病気が良くなったかどうかは関係なくなる。

高齢者が入院すると、ほとんどの場合はもともとのADLよりもアクティビティは落ちる。介護する家族の負担はそれだけ増え、家族の退院への意欲もますます落ちていく。

こうした家族に退院のお話を持ちかけた瞬間、今まで築き上げてきた医師‐患者の信頼関係は消失する。点滴を間違えてしまうといった致命的なものから、ムンテラの時間に遅れる、食事から嫌いな物を抜くのを忘れるといった日常生活レベルの物まで、入院期間中には何らかのミスは必ず生じるが、退院のムンテラを聞いた後の家族にとっては全ての医療者のミスは入院期間延長の交渉材料となり、また医師に対する不満の種になる。

退院日の決まった患者さんというのはもはや急変する可能性はきわめて低く、通常はそれほど注意を傾けなくても大丈夫なものであるが、こうした高齢者の慢性疾患の人を退院させる場合、退院前の最後の数日間に生じたミスは後々とても大きなごたごたに発展する可能性があり、注意を要する。