他科との連携

正しいことを正しく主張して相手を論破しても、人間関係が壊れれば他科と連携して患者を診るメリットは消失する。

特に循環器や消化器の若手は「世界で一番賢いのは俺様だ」という意識が強く、たとえば集中治療部に協力を求める際にも「ベッド管理とバイタルチェックのみをやってくれれば、後は全部こちらでやります」などと言ってしまったりする。しかし、いくら自分の方針に自信があっても、協力を求めた他科との人間的な信頼関係がなければ、まともな併診などしてくれるわけもない。

若手を通して他科に協力を求める際、往々にしてやられるのが相手の知識不足や勘違いをついて相手を論破し、その上でこちらの方針を説明して自分たちの要求を100%通そうとする行為である。

しかし、最初からそれをやると相手のプライドが傷つくだけでなく、こちらの思い込みや間違えを指摘してもらう機会は奪われ、患者に対して力を貸してもらうどころではなくなる。

自分がいつも心がけているのは、自分たちが併診してほしい患者が今当科的にどういった問題を抱えていて、最終的に自分たちとしてはどうしたいのかの方針を明確にすること。特に、今自分たちが何を一番困っていて、相手に力を貸してもらえることでその患者がどうよくなるのかの期待値をなるべく具体的に提示することである。

優れた交渉者というのは、相手が決して押しつけられたと感じず、あたかも自身が発想したかのようにその合意内容をまとめることができる。交渉を繰り返す中で、相手が自分たちの提案を相手があたかも自分の発想のように語り出す瞬間がある。

それをとらえ、「それで行きましょう」と言うと、相手も気分よく協力してくれる。こうした交渉は他科の医師だけでなく、他の職種との会話でも非常に重要だと思う。