戦場で使えないPDA

Palmを弄くりまわすのは面白い。こんな小さな道具がなぜこんなに楽しいのか、いまだによくわからないまま遊んでいるが、やはり面白い。別にゲームをするわけでもネットにつなぐわけでもなく、単に手帳の代わりに使っているだけなのだが、何年経っても飽きない。

一方でPalmを含めたPDAは、本当に忙しい職場では使い物にならない。外来患者が毎日50人近く、入院患者がやはり同じぐらい、救急車が1日数台来るのも全部自分の責任…といった環境では、もうスタイラスを出しているひますらない。

病院が忙しくなってくると、「先生あれやって」「何時にムンテラ」「この人の次の外来いつだっけ?」といったタスクは山のように出来るが、その予定を個人で管理するのは不可能になる。

こういった戦場のような職場で役に立っていたのは、単なる紙1枚。その日のうちにやらなくてはいけないことを片っ端から書いていき、終わったらボールペンでグシャグシャと消す。これだけ。

スケジュールについてはもう病棟任せ。ムンテラのセッティングなどは婦長さん任せにして、家族には医者のいるところに来てもらう。とてもじゃないが「何時にどこで待ち合わせ」など、覚えていられなかった。

Palmにはもちろん、スケジュール管理やToDoなどが準備されている。しかしその日のうちにやらなくてはいけない仕事が一定の量をを超えてしまうと、もう何をやっても効率を上げることなど不可能になる。Palmに仕事の予定を記載しても、それを参照する前から次の仕事が押し寄せる。結果、入力時間だけ無駄になってしまう。

PDAをいくら用いても、仕事を片付けないと家には帰れない。予定がある程度決まっていて、仕事の計画をある程度だてることが出来るプロジェクトであれば、PDAを用いて仕事の効率を上げることは可能かもしれない。

ただ間違ってはいけないのは、PDAは効率を上げることは出来ても仕事の絶対量を減らすことは出来ないという点で、どうしようもなく忙しい病院ではスタイラスを持つひまがあったらさっさと外来を回したほうが早く帰れる。

ここにきてTungsten Cを購入してから、あるいは状況が変わるかもしれないと感じている。

今やっていることも、結局はToDoにその日にやらないといけない仕事片端から殴り書いていく、というだけなのだが、キーボードを使った入力はとにかく速い。まだまだタッチタイプもままならない状況ではあるが、それでも今まで使っていたペン入力とは比べ物にならない速さで入力できる。ボールペンをいちいち出さなくてもいいぶんだけ、下手をすると手書きよりも速いぐらいだ。

TungstenCについては興味を引かれたのは速さとキーボードだけ。メモリについてはTungstenEの時にすでに十分すぎるほどであったし、無線LANはそもそも地方都市にそんなものはない。

ただ、そのキーボードの快適さとCPUの速さは自分の予想のはるかに上を行っていた。今までPDAを仕事で使う際にボトルネックになっていた検索の遅さと入力の遅さはかなり解消されており、これならば忙しい病院でも実用になるかもしれない。

今は新しいアプリを試すわけでもなく、黙々とキーボードのタッチタイプを練習しているだけなのだが、内心はこのデバイスにはかなり期待を抱いている。

ようやくPDAが実用になるときがきたと思ったら、Sonyはすでに撤退をはじめているわけだが。散々市場を食い荒らしておいてここに来て撤退では、あまりにも無責任なのではないのだろうか。