某ブランド病院の研修医のこと

1年目の研修医の頃。

何かの機会に、当院に循環器の大家の先生が講演に来て下さったときのこと。

聖○加国際病院に関係のある方だったからか、同じく1年目ぐらいの聖路加の研修医が、当院までその講演を聞きに来た。

他の病院の研修医に会うのは初めて。

こちらは野郎ばっかり。前をはだけた白衣の下は手術着。白衣に飛んだ血しぶきもそのまま。当時は今以上にバカだったから、みんなこれがカッコいいスタイルだと信じてた。

聖○加からきた研修医は、長い髪の女医さん。わざわざSt.Lukeと肩に刺繍の入った白衣を持ってくる気合の入れよう。全身から「こいつらと同じ空気を吸いたくない」オーラを全身から発しているのが伝わってきた。

講演会の間中、当方らとはもちろん口をきくわけもなく、講師の先生にわざわざ英語で質問をしてから病院を後にしたのを覚えている。

何だあいつ、スカしやがって!

わざわざ白衣持ってきて、何様?

彼女が去った後は罵倒の嵐。こういうのを負け犬の遠吠えという。

まだインターネットも2ちゃんねるもない、大学から外に出ると他の病院の情報など全く入ってこない時代。自分を支えてくれるのは過剰な自意識ばかり。みんな意味もなくブランド病院に対抗意識を燃やし、「とにかくあの聖○加野郎にだけは負けたくない」という気力でその後の研鑚に励んだのも今は昔。

その後自分も年齢を重ね、聖○加の研修医のその後も決して楽ではないと分かったり、実際に聖○加の先生からいろいろものを習う機会もあったり。だんだんと件の病院に対する反抗心もなくなっていったが、聖○加のマニュアル本を見ると今でも当時のことを思い出す。

病院のブランドを維持する苦労とブランドを追いかける苦労。ブランド病院に縁のない当方には前者の苦労は想像するすべもないが…。当時の○路加の先生、実際のところ我々の汚い格好を見てどう思ったんだろうか?

あのときの汚い生き物を見るかのような彼女の視線、聖○加の研修医特有(N=1)の周囲をさげすむようなオーラは、当時のわれわれの被害妄想だけではないような気がするのだが…?。