保健所とのつきあいかた

以前、某地方の病院で一人内科に飛ばされていたときの話。近所の老健からどう見ても結核にしか見えない患者さんが搬送されてきて、調べてみたらやっぱりガフキー7号。

すぐに近くの結核治療可能な病院に搬送を…と保健所に問い合わせてみたものの、「すぐに受け入れ可能かどうか調べてみます」の一言の後、何の連絡も来ない。夕方になっても返事が無いので問い合わせると、「5時以後は守衛しか残っておりませんので、明日また連絡を」との返事。

ふざけるなと思いながらも一晩経過し、翌日問い合わせなおすとやっぱり何の話の進展もなし。いろいろと問い合わせてはいるんですが、との担当者の弁も、しょせん5時までの努力かと思うと怒りが込み上げるばかり。

自分は専門家でもなければ結核患者を多く見た経験も無い、せめて感染隔離の方法が今のままで合っているのかどうか、何かもっと正しい方法があるのかどうかのアドバイスがほしいので一度病院まで指導にきてくれませんかとお願いすると、そちらはすぐ手配できますとのこと。

実際のところ隔離室も無い、結核患者を継続させて入院させたことも無い、自分だってこの病院にきてまだ2週間程度しかたっていないというような状況でこうした患者を受け持つと、自分がいかに感染症治療に対して無知であったか痛感する。

このときは個室が空いていたが、空調はこの病院の配管どおりでいいのか、看護にあたる病院職員はどう選別すればいいのか、手洗い場所は同じナースルームのそれを共有してもいいのか、病衣やオムツの捨て場所は他の患者さんと一緒でもいいのか、紫外線灯などもちろん無い状況で、代わりに何か使えるものがあるのかなどなど。専門的な知識があればたぶんあたりまえのことなのだろうが、自分には何一つ確信を持って返事ができる問題など無かった。

結局、報告から5日たっても転院可能な病院は見つからず、50も過ぎていそうな「専門家」の先生がやってきてくれたが、何を聞いても「難しいですね」の返事のみ、ついには「先生はよく勉強しているから、多分大丈夫ですよ」と。結局患者も診てくれず、何かやたらとそわそわしはじめたので時計を見ると5時だった。怒る気力も失せたところで、専門家は帰宅。

その後も病院は見つからず、2週間経って「もう感染はしないから転院させなくても大丈夫でしょう」とのコメントが転院させたかった病院の医師から届き、この騒動は終了したがまったく納得がいかなかった。

後日、食中毒で外科の先生が診ていたらしい患者について、同じ保健所の職員がわざわざ来院。なぜか、連絡もしていないのに保健所から細菌検査室に問い合わせがあったようで、細菌検査室から保健所のほうに便培養の情報を入れていてくれたらしい。

で、用件はその患者さんがあたったすし屋が、保健所職員の家族だとのこと。「すしは生ものですし、その後はそうした問題も起きていません。先生が今回の件は正式に報告するにあたらない、と判断していただけるなら、保健所としてもわざわざ動く必要は無いんですが。」だと。

要は、「もみ消せ。」ということですね。と念を押すと「そのとおりです」との返答。

こうした経験から得た自分なりの結論。

保健所の人は、病気に関する仕事は5時までに報告しないと絶対動いてくれない。

5時までに相談しても、これから働くと5時を過ぎそうなことは絶対に親身に聞いてくれない。

保健所の人が本気を出すと、その組織力、情報収集力はものすごい。ただし、その力が身内以外の人に対して使われることはめったに無い。