少量のバソプレシンには腎保護作用があるかもしれない

敗血症性ショックをはじめとする血管拡張型のショックの患者に対して、近年バソプレシンの持続静注が行われるようになり、よい成績が報告されている。

こうしたショック状態になった患者ではしばしば尿量の低下が問題になるが、バソプレシンを少量持続静注することで、こうした問題を解決できるかもしれない。

バソプレシンは本来は抗利尿ホルモンとして知られていた物質であるが、ショック状態の患者に用いた場合、同程度の血圧を維持していても、カテコラミン単独使用で血圧をコントロールした場合に比べて尿量の増加が報告されている。

動物実験で敗血症急性期の高心拍出量状態を作り出した場合、心拍出量は増加しているものの、血中クレアチニンの増加、尿量の低下が観察される。これは何らかの理由でGFRが低下しているからであるが、その理由としては腎臓全体の血流低下によるよりも、輸出細動脈が輸入細動脈に比べてより拡張してしまっているからと考えられる。

バソプレシンは少量で用いると輸出細動脈を収縮させる働きがあり、見かけ上のGFRが増加する。このため、敗血症の急性期の尿量低下に対しては尿量を維持し、腎保護的に働く可能性がある。

敗血症の患者でのノルエピネフリンバソプレシンとの比較トライアルでは、両者とも血圧は同程度に維持することができたものの、ノルエピネフリン群では尿量の変化は見られなかったのに対し、バソプレシン群では有意な尿量の増加、75%のGFRの増加が見られている。

バソプレシンを使用する量としては、0.01-0.04単位/分としているものが最も多い。この量で1日用いると、1日量はだいたい14-57単位(20単位/1A)となる。

敗血症で入院するような人は、たしかに尿量が低下して治療に難渋する人が多い。血圧が低いのであまりラシックスなど用いたくなく、少量のDOAなど用いてもあまり効果が実感できない。かといってラクテックを狂ったように落としても、今度は浮腫と肺水腫が怖い。

今度何かの機会に使ってみよう、とも思うが、自分の周りは心原性ショックばかり。こちらの患者さんにはバソプレシンの効果は期待できないような気がする。