高用量のAT-�製剤は敗血症の予後を改善しうるか

Effect of long-term and high-dose antithrombin supplementation on coagulation and fibrinolysis in patients with severe sepsis

敗血症の急性期には体内での凝固能が亢進し、AT-�が消費されることが分かっている。このため、敗血症患者に対してAT-�製剤の投与により予後を改善することが試みられてきたが、4日間程度の短期間の投与では、予後の改善効果を証明することはできなかった。

このトライアルでは、対照群20名、AT-�群20名の計40名の敗血症患者にAT-�製剤を14日間投与し、患者の凝固系のパラメーターがどう変化するかを検討している。

患者は重篤な敗血症と診断されたICUの患者で、トライアル開始と同時に患者のAT-3を測定、AT-�濃度が正常値の120%になるようにAT-�製剤を連日投与し、凝固能の変化を測定した。

結果、AT-�投与2日目よりAT-�血中濃度は目標値に達し、その濃度は14日間にわたり維持することができた。凝固のパラメーターについては、TT/PT/フィブリノゲン濃度はAT-�投与6日目ごろより有意に正常値に近づき、血小板数は実薬群、コントロール群とも14日間の経過で徐々に正常化した。

また、活性化プロテインCの濃度もAT-�投与群で有意に上昇していた。

敗血症の予後の改善を証明した薬剤のひとつに、活性化プロテインC製剤がある。この薬は当分の間は日本に入ってきそうも無いので、代わりに使えそうなものとしてアンスロビンのようなAT-�製剤がある。

このスタディでは予後については全く論じていないが、AT-3も大量に投与すると活性化プロテインCを投与したのと同じような凝固パラメーターの変動を得ることができると結論している。一方、このスタディの期間中、実際に敗血症で亡くなった患者さんの数はAT-�投与群のほうがわずかに多いのが気にかかる。もちろん、統計的に有意差は無いのだが。

一番の問題点はコストだろう。アンスロビンが500単位のもの1バイアルで4万円。このスタディどおりの量を使おうとすると、1日量でだいたい4バイアルは必要なので、この14日分で224万円。実際には敗血症の改善に応じて投与量は減るのでここまではかからないだろうが、結構高コストになる。ICUの治療にコストなんて関係ないが、ちょっと勇気のいる金額ではある。

保険屋さんは許してくれるのだろうか?