過誤防止

部長のみっともない治療

##研修医の頃 当直帯で「患者さんが苦しがっています」というコールがあったときの話。心不全なのか喘息発作なのか、目の前の患者さんはとにかく苦しがる。 聴診してもゼーゼーいう音が聞こえるだけで、診断にはつながらない。1年目だった自分だけでは手に余っ…

正直さと即興性

料理人や大工仕事、手術や心カテに至るまで、様々な職人仕事には、 「正直さ」に優れた人と、「即興性」に優れた人とが存在する。##菓子職人の正直さ たとえば、同じ料理人であっても、菓子職人の凄さと、出張料理人の凄さとでは 意味あいが異なるんじゃないかと…

医療過誤に至る物語

船の中から船の動きを知るのは難しい。動きというのは相対的なものだ。それを測定するには、 何か動かないものを見なければならない。外の景色とか。星の動きとか。自分自身で自分のことを知るのは難しい。自分が考え、行動していることは果たして正しいのか…

クレームの対策について

>**息子** お母さん、明日の遠足のお菓子代、300円頂戴。 >**母** 明日は雨よ。遠足前日。担任の先生との約束では、お菓子代は200円まで。 息子は友達と共謀していて、当日にはみんなで、少しだけ多くのお菓子代を持って行こうと 画策している。母親は別の情…

良医という普通の存在

以前のケースも今回のケースも、医学的にはたしかに回避不可能なケースで、 それを結果責任で刑事告発されてはたまったものではないのだけれど。一方で、同様のケースにあたっても何とかしてしまう医者というのも世の中には 多分いて、そういう人達はどんな…

偽医者稼業は効率がいい

##ローリスクハイリターンの医療詐欺 偽医者をやっていた人が逮捕された。評判は良かったらしい。たぶんそんなに大きなトラブルもおきてはいないはずだ。偽医者という「仕事」は、リスクの割りに得られるものが大きい。もちろん犯罪ではあるけれど、 いろいろ…

変えないことが武器になる

##そのイノベーションは望まれているのか 新しい手術方法、新しい処方。クリニカルパスや電子カルテ。病院は、毎日進歩している。どんな進歩も「**患者さんのため**」。業界でもっともいかがわしいお題目は、ここでも大活躍だ。変化を許容できない個人や組織…

報われない医療過誤防止の努力

人間という生き物はばらつきが大きくて、同じことをやっても、トラブル無く上手く行く人と、どんなベテランがやっても上手くいかない人とは確実に存在する。##安全を求める努力は自壊する治療に関するトラブルというものは避けようがない。それを減らすこと…

高名の木登り

高名の木登りといひし男、人を掟てて高き木に登せて、梢を切らせしに、いと危く見えしほどは言ふ事もなくて、おるゝ時に、軒たけばかりになりて、「あやまちすな。心して降りよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛び降るとも降りなん。如何に…

情報を壁に貼る

CPRの手順、病棟でよく使う薬の作りかた、病棟で行われる代表的な化学療法のレジメンなどは、それを大きな紙に書いて、ナースステーションやERの壁に貼っておくと便利である。壁紙に情報を張ることには以下のようなメリットがある。 うろ覚えによるミスをな…

ベッドサイドに情報を集める

入院患者の病気に関する情報、処方内容や病歴、臨床経過、温度板といったさまざまな情報は、すべて入院している患者さん本人のものだ。自分の持ち物を離れたところに放置する奴はいない。病院ではなぜか、カルテや検査結果、病棟オーダーといった情報は患者…

フォネティックコード

業務にかける予算と、業務の確実性とは比例する。現在の日本の医療行政は、これだけ少ない予算とマンパワーの割には高い信頼性を維持していると思うのだが、世間様は許してくれない。何とかお金と人手をかけずに過誤の機会を減らす方法を、以前からあれこれ…

難病の子出産は医師の説明不足

読売新聞の記事。遺伝性難病の子供が生まれたのは、医師の説明が不十分だったためとして、東京都内の夫婦が日本肢体不自由児協会(東京都板橋区)に計約1億6200万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が27日、東京高裁であった。裁判長は医師の説明不…

修羅場で情報を伝える

突入したらまず石を投げろ。投げ終わったらただちに突っ込め。 至近距離まで突っ込んで、相手の腹を突け。 絶対に退くな。退いたらやられるぞ。「突破者」宮崎 学氏が、民青系の学生大会に突入する前に学生に発した命令がこんな言葉であったらしい。学生同士…

薬のランクづけ

研修医として入った病院には、深夜の救急外来で処方できる薬剤に階級があった。夜間の救急外来は研修医が診察するルールであったが、研修医が自分の判断で処方できる薬、処方するのに上級生の許可がいる薬、さらに処方するには責任当直医師の判断を仰がなく…

ブービートラップ

ゲリラ側の攻撃手段のひとつに爆弾を用いたブービートラップがある。ベトナム戦争で多用されたものであるが、米軍側のあまりの犠牲者の多さのためにブービートラップを踏むパターンが解明され、マニュアル化された。医療過誤の防止策に通用する部分もあるか…

急変に強くなる

病院で仕事をしていると、患者の急変、家族の急なクレーム、医療事故等予想し得ない自体が生じることはよくある。このときに人がどう行動するものなのかを知っておくと、万が一のときに役に立つ。災害時に見られる人間の行動には特徴がある。すなわち、人は…

過誤を減らす方法

失敗のメカニズム-忘れ物から巨大事故までエアバスA310墜落のケース。エアバスはコンピューターと人間が相反する操作をした場合、コンピューターを優先する設計だったことが災いした。ボーイングは逆。しかしどちらが究極的に正しいのかは分からない。思い込…