コミュニケーション

偽の専門家

専門家のアドバイスを求めるとき、こちらとしては今の状況を打開するための方法論を示して欲しい。別に専門家の講義を聞きたいわけじゃない。その疾患に対する理想論を延々と述べられても困ってしまう。偽の専門家は多い。肺炎を診察できない人工呼吸器の専…

上手くいっているものは変えてはいけない

病棟勤務医の移動の時期だ。これに伴い、外来患者さんを新たに引き継ぐ機会は増える。長く同じドクターにかかっていた患者さんのカルテを診ると、たいした病名でもないのに6種類も7種類もの薬を服用している人が時々いる。どの薬剤もたいした薬効も期待でき…

専門科コンサルトの問題点

大学病院で診療をしていく上での最大の強みは、全ての疾患の専門家が集結していることだ。市中病院の連中にどう批判されようと、数は力だ。マンパワーはあればあるほどいい。そのうえ手を貸してくれる人が本物の専門家集団なら、もう無敵だ。ところがこの専…

EBMの活用方法

EBMという概念は、某巨大掲示板のような場所で使われると、相手にとって迷惑この上ない武器になる。 その発言のエビデンスレベルはどのぐらいなの? 反論するけど、NEJMのバックナンバーぐらい全部読んでるよね? そんな治療、ガイドラインのどこにも書いてな…

NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術

NYPD No.1ネゴシエーター最強の交渉術以前から興味のあった分野の、ようやく本命的な内容の本が出版された。紹介もとのサイトの内容を見ると、以前元ネタにしたものよりはマニュアル色は薄そうだが、日本語訳されたものの中では間違いなく一番内容が濃い本だ…

正しいことだけがすべてではない

他科と共同で患者さんを診療していると、時々出くわすのが「正しい」治療を振り回す先生である。EBMという(ひどく誤解されている)概念が出回ってから余計にひどくなったが、「ガイドラインからは先生の処方は無意味です」「その検査のエビデンスは何ですか?…

尋問の方法

警察が容疑者を取り調べる際の方法論。取り調べでのセリフ例「何もかも洗いざらい正直に話せ!よく思い出してみろ!」「おまえがやったのはわかってるんだ!罪を認めなきゃ一生ここから出れないんだぞ!」「素直に認めりゃ、起訴猶予にも出来るし、悪くても…

外来の早い医者は評判がいい

あせればあせるほど外来の患者は滞る。1時間待たされた人は1時間分話を聞いてもらおうと怒涛のようにしゃべり、それを適当に聞き流そうとする医者の雰囲気はすぐに相手に伝わる。「こいつまともに聞いていないな」と感じた患者はますます会話のトーンを上げ…

インフォームドコンセント

患者への説明は大切だ。現在の病気の状態はどうなのか、どういった治療法があって、それぞれどういった利点と欠点とがあり、治癒の見込みや社会復帰の可能性などはどの程度あるのか。医師は知りうる限りの全ての情報を患者側に提供しなくてはならず、患者は…

患者さんのマネージャーとしての主治医

どんなに大きな病院であっても、集中治療室のベッドの数は限られます。当院はかなり大きな病院ではありますが、集中治療室は7床あまり。ベッドは常に満床で、そのベッドを各科が取り合いになります。ベッドをコントロールするのは集中治療チームの先生方です…

他科との連携

正しいことを正しく主張して相手を論破しても、人間関係が壊れれば他科と連携して患者を診るメリットは消失する。特に循環器や消化器の若手は「世界で一番賢いのは俺様だ」という意識が強く、たとえば集中治療部に協力を求める際にも「ベッド管理とバイタル…

批判は拳の届く距離で

さあ!! 諸君!! 煽ったり煽られたり 潰したり潰されたりしようさあ 乾盃をしよう 宴は遂に 今宵・此の時より開かれたのだネット上の議論は楽しい。匿名の相手同士は些細なことから議論が始まり、瞬く間に過激な意見の応酬に発展する。議論の手段は手元のエビ…

「頑張ってますね」は禁句か?

人の誉めかたには、努力の過程を誉める方法と、その結果を誉める方法との2種類がある。「頑張っていますね」「大変ですね」という言葉は相手の努力の過程を賞賛する言葉だが、声をかけた相手は自分に比べてなにか大変な思いをしている、ということを前提にし…

他科との転科交渉

重篤な患者、問題が複雑な患者が救急外来から入院すると、複数の科の医師が同時進行的に患者を診察することが発生しうる。当院では、当座は救急外来/集中治療室が主治医を務めるが、後々になり、どこの科が主治医としてその人を診察するかでもめることがある…

研修医の心理的抵抗を解く

尋問官の使うテクニックの一部。尋問官を上級生、容疑者を研修医という言葉に置き換えてみたがどうもしっくり来ない。昔書いた怪文書は、5年程前に自己啓発セミナーのトレーナーガイドをもじって簡単に作ったものだが、最近まで随分長いこといろいろな所で引…

尋問の方法

リラックスした親しみやすい取調べはたいてい良い結果をもたらす。できる限り早く、記憶が鮮明なうちに取調べを行うべきである。 助けを出す。そのとき何をしていたか? なぜのそのような行動を取ったのか? そのとき何か他のものを見たのか? 何か他の物音を聞…

意図的に仲間はずれをつくる

何人かの人が集まる中で会話するとき、集団の中に多数派と少数派とを作ったほうが会話が盛り上がる。少数派は何とかその状況を脱しようともがく一方、多数派には強力な仲間意識、共同体意識が生まれる。多数派でいるのは楽なので、皆常に多数派であろうとす…

戦いを挑む前に

臨床医をやっていると、いろいろな人とのトラブルはつきものになる。患者さんの家族や、場合によっては患者さん自身と一戦交えようかという場面も決して珍しくはない。病院内で他の業種の人と喧嘩になりそうになったとき、自分は以下のような点に気をつけて…

退院時の注意

全ての患者が良くなって退院してくれればいいが、内科はそうは行かない。特に高齢者の割合が増える一般市中病院の場合、家族の希望は出来るだけ長い期間の入院になり、もともとの病気が良くなったかどうかは関係なくなる。高齢者が入院すると、ほとんどの場…

叱りかた

正しい部下の叱りかた。相手をしかるときの評価の基準は常に一定にする。自分の気分で閾値を変えてはいけない。自分の何が悪くて怒られたのか、その回答が明確でないといけない。後で叱らない。その場で叱る。過去の事をほじくり返して一緒にまとめて叱らな…

交渉ごと覚え書き

仕事上の仲間、患者さんやその家族との交渉にあたって留意すべきことの覚え書き。 文章にまとめるつもりがなかなかまとまらない。 相手から欲しい情報を入手した直後に、会話を終わらせてはならない。あと2つ3つ雑談をして、そのあと会話を終了する。あとか…