小話

魂消える演劇というもの

演劇を見るのもやるのも恥ずかしかったのは小学生の頃。作り話を楽しまず、斜に構えるのはかっこいいことだった。空気の読めない子供はせっかくのライブ演劇(昔は3ヶ月に1回ぐらい、体育館に劇団が来てくれた)を楽しまず、奇声をあげたり歩き回ったりして、…

消毒された世界

##子供の頃のお祭りは面白かった 子供の頃の夏祭りは、特別な空間だった。熱心に踊る人。色とりどりのテキ屋の屋台。酔っ払った大人。 暗闇のなかに照らし出される、盆踊りのやぐら。暗い夜は慣れていた。当時の小学生は、塾通いは当たり前。電車に乗って、…

カオスの縁を目指したフォースの意思

##ジェダイの騎士はなぜ弱いのか ジェダイは弱い。どうしようもなく弱い。正義が勝てる場面は何回もあった。さっさと議長を殺害できれば。クローン軍の契約を打ち切って、もっと別の方法を探れれば。ヨーダのやっていたことは、水戸黄門と同じだ。無敵に近い…

Happy Tree Friends 特別番組

当院でも大人気のほのぼのグロアニメ[Happy Tree Friends](http://happytreefriends.atomfilms.com/index.html)の豪華特別版が、[G4](http://happytreefriends.atomfilms.com/index.html)というオンラインTVで30分番組として放送されるらしい。放映予定は、9…

医師の評価つき検索サイトの実現可能性

##つながっていないものをつなげてみる 医師と患者はつながっていない。患者さんの訴えるのは「**症状**」。医師が専門にするのは「**病気**」。そもそも目的が違う。>「あなたの症状は、私の専門から外れますね。」患者さんの症状の原因が分からないとき、…

勝利条件は何なのか

##強いだけでは競争に勝てない 豊富な資金、莫大なマンパワーや技術。何かの競争をするときには、こうしたものはとても大きな武器になるけれど、勝負はそれだけでは勝てない。勝負には、必ずルールがあり、ルールごとに勝利の条件というものが違う。 勝利の…

児童百科事典という本があった

保育園(家のあった地域は6年保育だった)から小学校に上がるかどうかの頃、家に帰るといつも読んでいたのは百科事典だった。児童百科事典というのは、当時は百科事典の編集と出版に命をかけていた平凡社が、1959年に出版した子供向けの百科事典だ。地味な本だ…

水と油を混ぜる方法

水をかけると全てのものは変化する。種は芽を出し、金属は沈んで錆びる。砂糖は溶けるし砂は泥になる。粉をまとめるには、水を加えて「こねる」必要があるけれど、あまりにも性質の違うものを水でまとめると、収拾がつかなくなる。##チームは性質の違う粒子…

外科の「真意」を意訳する

>ベルリン(ロイター) 外国語辞書を出版するドイツのランゲンシャイト社がこのほど、男女間のコミュニケーションをより円滑なものにするため、男性の言葉の真意を「訳す」辞書を発売した。 >ランゲンシャイト社によると、男性は日常生活で、女性の半分程度…

技術は消費されるが芸術は賞賛される

>「なぁ…知ってたか?。パリのルーブル美術館の平均入場者数は1日で4万人だそうだ。 この間、マイケル・ジャクソンのライブをTVで観たが、あれは毎日じゃあない。ルーブルは何十年にもわたって毎日だ…。開館は1793年。毎日4万人もの人間がモナリザとミロの…

認識のスケール

何が知りたいのか、状態や経過をどういう空間軸、時間軸で把握したいのかによって、検査の有用性というものは全く変わってくる。たとえば、「心不全」という一つの病態を把握するのに、現在よく使われるのが、心エコーと血液中BNP濃度だ(他にも聴診や問診、…

魔法使いの弟子

##魔術は「場」の力を借りる技術 一人でできることというのは限られる。重症の患者さんの治療。何か特別な治療手技。医療に限らずどんな業界でも、大きなことをやろうと思ったら他の人の助けがいる。人は集まって「場」を作る。数人の集団から、病院や会社な…

組織崩壊までの4段階(再掲)

社会にはいろいろな組織がある。病院や会社といった組織。「内科」「医療界」といった、いくつもの施設が集まった、さらに大きな組織。どんな組織にも創業者たる代表がいて、その人、あるいはその組織の求心力に引き寄せられて人が集まり、組織を作る。病院…

いまSARSが再燃・流行したら、治療法は?

現在、もしSARSがひろがったら医師はどういう治療法をするでしょう。 [国立感染症研究所](http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/) の治療の項目を見てください。 ↓ http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/gdid-04.html これが国の機関の答えです**。 [内科開業…

病院の中の幽霊

ほんの10年ぐらいまで、病院というのは怖い場所だった。幽霊の噂なんかどこの施設にもあった。>夜の病棟には、首から下のない患者が徘徊する。手術室のエレベーターの中で患者さんの悪口を言えば、エレベーターは霊安室のある階で止まる。天井から人の足、壁…

出来ることと見えること

以前研修を受けた病院では、まず見て、学んで、その後で実際にやってみて、さらに他人に教えられるようになって一人前と習った。「それが出来る」ということと、「それを知っている」ということとは全く違う。知識の成長過程として、以前は何の疑問もなく「知る」…

奇跡のおきる場所

肥料をやりすぎた植物は大きく育たない。知識も同様。現場に何かのニーズが生じたとき、それを達成するのに必要な条件に制限が加わって、はじめて新しい知恵やノウハウといったものが生み出され、その現場での知識というものに新たな蓄積が加わる。時間的な…

夢を見せる機械としての大学

自分という人間は、世の中でどれほどのものなのか。今までの生き方は正しいのか。これから進もうとする道というのは「いい」道なのか。たいていの人にとって、人間の価値というものは相対的なものだ。自分の価値というものは、他人と自分との距離感からしか…

知識の次に来るものは

知識の集まるところには、お金が集まる。毛唐の人たちは100年以上前からこのことに気がついていて、学会を作り、LancetやNEJMを創刊してきた。学会費や雑誌の収入だけじゃない。知識の流れを握るということは、すなわち力の流れを握るということだ。日本がど…

その勉強に意味はあるのか

若い頃はよく勉強した。早く上から認められたい。同級生に差を見せつけたい。周囲から「すごい奴」とはやしたてられたい。勉強は患者さんのため?正しい治療のために知識をつける?そんなことはどうだっていい。知識は力だ。力さえあれば、発言力が強くなる。周…

傾聴という万能薬

設計者の発言: モデリングセッションに必要な能力「共感力」を読んで考えたこと。 「初めて吉野に花見に行ったのだけれど、千本桜ってのは誇張じゃないんだね。すごいなあ、あれは。」春の休み明けに読者の友人がそんなことを言ったとする。それを受けて、読…

価値観の多様性を認めるということ

多様性がマイブームだ。ローテーション研修制度。ガイドライン中心の診療。どちらもお上が「あるべき研修医、あるべき診療基準」を示して、「何が正しく、何が間違いか」、「どちらが優れていて、どちらが劣っているのか」を決定し、順位づけしようとしてい…

それは患者であって人ではない

やることは決まっている。たぶんこの病気だ。経過も理学所見も、まず間違いなくその疾患を示唆している。すでにその病気に対して正しい治療は開始され、後数時間もすれば症状は落ち着くはずだ。それでも本当に正しいことをしたのか。自分の下した決断は合っ…

遺伝子治療の未来はどっちだ

遺伝子治療が実用化するということは、近い将来先生方の仕事の大半はなくなるということです。 たとえば糖尿病や喘息の症状を訴えた人が先生方の外来に来たとする。 先生方のやることは2つ。われわれの元に電話して、必要な遺伝子を作ってもらうこと、そして…

某ブランド病院の研修医のこと

1年目の研修医の頃。何かの機会に、当院に循環器の大家の先生が講演に来て下さったときのこと。聖○加国際病院に関係のある方だったからか、同じく1年目ぐらいの聖路加の研修医が、当院までその講演を聞きに来た。他の病院の研修医に会うのは初めて。こちらは…

専門外の治療は楽しい

自分の専門領域は一応循環器だが、趣味(?)でいろいろな科の話題に首を突っ込む。血液ガスの解釈、人工呼吸器の管理、電解質以上の管理や補正。最近では慢性疼痛の治療など。専門領域以外の話題に口を挟むのは楽しい。上級生の特権で、下級生の「専門家」(様…

夢には条件なんて関係ない

某外科に患者の手術を断られた。「ガイドラインでは、このステージに手術を行っても予後改善の効果は見られないので、手術の適応にはならないと思います」だと。「条件が悪いから手術ができない。やっても意味がない。」そんなことは無い。夢とは「だから」…

二元論的世界観

全く新しい世界に放り込まれた人間は、その世界の中で何が正しくて、何が間違っているのかを判定する能力を持っていない。何かを判断するためには基準となるものが必要になる。基準というのは自分の知識や経験の蓄積である場合がほとんどなのだが、例えば研…

世代間の抗争

刀鍛冶は一生かけて日本刀を作りつづける。目標にするのは鎌倉時代の名匠「正宗」、新撰組が愛用したことで有名な「虎徹」。伝説の域に達した達人の業物だ。どんなに努力しても、達人の日本刀にはなかなか及ばない。刀鍛冶は毎日炎と向かい合いながら鎚を振…

ウィルスのぬいぐるみ

アンゴラと国連当局者は22日、アンゴラ北部でマールブルグ・ウイルスに感染したことが原因で96人が死亡したと明らかにした。 マールブルグ・ウイルスは、出血性の熱を呈する「高病原性」かつ「高伝染性」のウイルスで、致死性の高いエボラ出血熱と同じ型。 …